Q

はじめに


いらっしゃいませ。 こんにちは。 aki と申します。
ココ「Q夢想」にお越しいただき、ありがとうございます。
以下、傾向とお知らせを兼ねての、簡単なご案内です。


 ( 夢小説 )

  名前変換なしの商人サイドでの話
  子供から少女、大人へと歳を重ね、キュウゾウとヒョーゴに見守られながら成長
  ほのかにヒョーキュウ風味。故に、微妙に三角関係

  現代パラレル設定でのヒョーゴ夢
  今後すこしずつ増やしていく予定

   『 確かな感触 』(with hyogo) UP


 ( ヒョーゴ×キュウゾウ パラレル )

  『 Lovers 』 晴れてコイビト同士となった大学生の2人。アマアマ
  『 Strayers 』 デキアガルまでの紆余曲折な高校生の2人。ジリジリ
  どちらの話にも随時カンシチ、ボ→ヒョが含まれています。ヤキモキ

   現在 『 想いの行方 』(Strayers) 更新中


   詳細は「しながき」をご覧下さい。
   進行中の話のみ逆表示となります。


版権元、出版社との関係はございません。
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中傷、苦情、荒らし等はお受けできません。
( sky_q54069★yahoo.co.jp @>★ )
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想いの行方 92




 ああゆうものをなんていうのか、オレは知らない
 ただオレは、間違いなく………



92


『CLOSE』の札は消えていた。
それでも入っていってイイのかどうか、ヒョーゴは迷った。
とりあえず、無施錠のままの不用心なクルマのなかへ、手荷物を放りこむ。
店のなかには誰も居ない。
手持ち無沙汰なキブンで扉を背にして、なんとなしに、表通りの喧騒を眺める。



結局、誰にも云っていない。云えなかった。
ココから抜けだそうとする、ヒョーゴのもうひとつの意をー。

時に、濃く。薄く。
纏わりついてくるモノたちに囚われ捕まり、思考能力の低下した頭のなかは、
もしかすれば伝えなければならないハズの、伝えようとしていたハズの、
自身に関する状況報告を怠らせた。

音は、大きく。小さく。
聞き逃しなど許してもくれないモノとなり、コントロールの利かない身体は、
もしかすれば不似合いだったかもしれない、無理をしていたかもしれない、
無駄に微笑う表情を浮かべさせた。

そして新たなモノを、植えつけてきた。もたらしてくれた。
まるで肉体を極限まで虐め抜いたあと、渇いた頭脳に染み渡る至妙な言葉のように。
良いコトも悪いコトも、解らないままの曖昧なコトも、みんな…。



ひと耽り、ふたたびヒョーゴは振りかえる。ガラス越しに店内をうかがった。
ソコにー。



     いた


     キュウゾウが、いた ………



いいや、正確には。
キュウゾウの姿が、光が見えたような気がしたヒョーゴが。 居た。

ココロが見せた錯覚。 それでも……。


カギの掛かっていない扉を入り抜け、進んだボックス席。
向かい側のソファにヒョーゴは座る。
なにも無いハズの空間を、視ていた。


「 お前は何処にでもいるんだな 」


静かな黒の眼差し、その先に。
この店でのキュウゾウが居た。

今日巡りまわったトコロたち。 そのドコにでも、現れ浮かんできた。
キュウゾウを知る者たち。心。 その全部が迫り向かってくる居場所。
つい先程までの、自分の部屋。 そのトキ零れた、溢れるまでの感情。
キュウゾウの匂い。仕草。声。 そのすべてが集約されたような空間。

ソレらとはまたベツの。ともすれば消えてしまいそうな、淡い色をしたキュウゾウが。
どこまでも優しい心が。

ソコには在った。



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想いの行方 91

91


そしてヒョーゴは、キュウゾウの家から出て、道路を渡り、次なる場所へー。
誰も居ないと知る家に入った。
スタスタと、澱みのない足取りで自室に向かう。
中途半端に開いたままのドアを引き寄せ、正面を見据えた。

脚を踏み入れる。

止めようとするモノ、声も物音も、オトも無い。
すでに決まっている、約束されているかのような、スムーズな身体の動き。
ヒョーゴが取る行動。


クローゼットから衣類を選び出した。
本棚から数冊の書籍を抜く。
机の引き出しからは、ひとつのファイル。
まとめてソレらをリュックに詰めこんだ。

息を吐く。

ココに来た目的が、コレですべて終了した。
後は出て行くだけ。
机の上のメットを取りあげた。
ドアに向かって数歩。


 ( ………? )


 持ってきていたか……?
 叔父や両親と話していた時、手にしていたか…?
 いや…。バイクと一緒にガレージに置いてきた。
 では、コレは…………


手に提げたヘルメットへ、ヒョーゴは目線を落とした。
振りかえる。ゆっくりと。
まるで「怖いもの見たさ」の心境そのもので。

先程までソコにモノが置かれていた、いまはソレが無い机の上。
どの段になんのタイトルが並んでいるか、探さなくても覚えている見慣れた本棚。
光と風を得ようとする時、眺めたい景色を迎える時、開け閉め自由の窓とカーテン。
それから。


    セミダブルのベッド


ソレも決まっていた、約束されていた動きだったのだろうか。
ヒョーゴのカラダは、手招きをされているように吸い寄せられた。
数えるように視線も微動する。

シーツの上で丸められたままのタオルケット。
蹴り飛ばされたまま放置状態のような上掛け。
本来の用途を無視する位置に置かれたマクラ。
それとー


    跡     ……… カタチ




ヒョーゴのカラダの何処かが、ないて。 こころが、なく。 ココロが、なる。

      無くしたモノに 啼いて  眼にして 哭く  触れて… 鳴る




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想いの行方 90

90


家人の帰宅を待てない自分に代わり、叔父に言伝(ことづて)を頼むことも忘れて、
ヒョーゴは階段のある方向へと脚を向けていた。
リビングから玄関に、まっすぐ進むハズだった。
なのに意志を違えて、カラダが動きだしていた。

ココロが、向ける。 カラダを、向かわせる。


目的地はキュウゾウの部屋。
閉じたドアに手をかける。 指がノブを回す。

 カチャ

ロボットが、ブリキの心臓を動かし始めたような音がした。

 フワァ

吸いこまれるように、開かれた扉に向かって逃げ出してくる風が起こった。

 トクン…

また………。 ココロが、鳴った。




なにを為すべきかも知らないヒョーゴが、その空間にボンヤリ踏み入ろうとしたとき。
階下で新たなヒトの声。
物音。……覚醒のオト。

キュウゾウの両親が帰ってきた。



「めずらしいな。お前ひとりなのか?」

2階から降りてきたヒョーゴを認め、実質上この家の主である男が言った。
実弟と、…叔父と… おなじ台詞を、キュウゾウの父親からも聞かされる。
「あら、ほんとうね」と。母親のほうも意外そうに微笑う。
曖昧な笑みを、ヒョーゴは浮かべた。


すでに叔父にも伝えていたコトを、あらためて出国を控えている者たちに告げる。
キュウゾウの、この家での最近の様子を知らないままのヒョーゴは、
時間への気掛かりと相まって、ひどく落ち着かない気分になっていた。
けれども滑らかに、彼らとの会話はこなしてゆく。
知り合ってから今日まで。ずっと見せ続けていた、彼らの息子の世話役としての姿で。

コドモのころは、意識してそうしていたワケではなかった。
自覚してからは、背伸びをするようにオトナとして振舞っていたかもしれない。
そうして、今はー。
認められようと。頼りにされようと。そんなキモチがあったのかも……しれなかった。

自分の中では確立しているハズのポジションを、別の誰かからも確かめてみたい。
きっとソレは、こころに揺らぎを起こす自身の弱さが求めていたモノなのだろう。
自分の知らないキュウゾウのトキを知っている、立場的にも近しい者に対してー。

…… けれど今のこのオレは、どうなんだ ……?

そのポジションを、投げ売ろうとしている。その場所から、逃れようとしている。
なのに振舞う様は、声は言葉は、以前からと同じモノ……。




「では、今日はこれで失礼します」

この場を締めくくる、そつのない挨拶でヒョーゴは立ち去ろうした。
キュウゾウに関する、特別なコトは訊かれなかったし、話されるコトもなかった。
家での息子の言動は、両親から見て、特に変わったトコロは無かったのだろうか。
なにかを言い忘れて、けれども思い出せずに、心残りのまま場を後にしてしまう、
そんな妙な気分で重たい扉を押した。


「ヒョーゴ」

開くドアの音と重なった、自分を呼ぶ声。
振り向くことで、応えた。

髪の色だけがキュウゾウと同じで。
それ以外、似ているところはない。
呼ばれたのは、ただの名前だった。
耳の器官が拾っただけの、只の音ー。


エントランスに立つ父親が、ヒョーゴに云った。


「 頼んだぞ 」




その言葉が鳴らしたのは、ヒョーゴの…。  その、オトは……。



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想いの行方 89

89


叔父のクルマだった。
こんな時刻に見掛けるコトに、違和感を持った。
キュウゾウの両親を訪ねてきているのだろうか。

…… というコトは、在宅中なのか……?

自宅へは入らずに、もうひとつのー。馴染みのある家へヒョーゴは向かう。
帰国当日の夜に夕食を共にしてから、その後なんどか顔を合わせただけで、
キュウゾウの親とは接触のないままだった。彼らのスケジュールも過密だ。

…… 待てよ、今日は何日だった? 確か、……………明日じゃないかっ。

そろそろ終わりの滞在期間。予定が変更されてなければ、この週末にはー。

…… やはり、この日を。 この時間を選んで正解だった。

悶々と籠りつづけていた日々の迷いごころも、店のなかで巡らせた今日の道筋も。
今のヒョーゴの、この状況を。ささやかにも正当化してくれるモノとなっていた。


キュウゾウの居ない場所。 いない、時間ー。




「よっ、ヒョーゴか。どうした? こんな時間に」

カギの掛かっていない玄関ドアを開け、ひと声かけながらリビングを覗くと、
そこには叔父がひとりで居た。のんびりとソファに寝そべっている。

「叔父さん、アンタひとりなのか?」

テーブルの上には、1人分のグラス。空になったウィスキーボトル。

「アニキ達は外出中…。ちょうど良かった、水を持ってきてくれ。呑み過ぎた」

トーンの下がった声で頼まれ、ヒョーゴはキッチンへゆく。
他人の家のなかではあったが、幼少のころから出入りしているヒョーゴは特別。
家人の誰もが、家族同然として扱っている。だから入るのも出るのも自由だし、
こうやって遠慮なく、使われるコトもある。

「昼間っから酔っているのか。仕事はどうしたんだ」
「学校はどうしたんだ?」

こうやって遠慮なく、軽口も叩ける。叩き返される。


「あれ? お前もひとりなのか?」

水の入ったグラスを受け取った叔父は、後から現れるハズの姿が無いコトに気づく。
いつも金魚のフンのように付いてまわっている甥っ子が居ない。
どうやらヒョーゴひとりのようだとー。

「めずらしい事もあるもんだ」

グラスを傾けた叔父が、喉を鳴らすたび。 透明の液体が減ってゆく。


「アイツは学校にいる。オレは……バイト中だ」

ゴクゴクと、旨そうに水を飲む姿を視て。 音を聴いて。
喉の、カラダの渇きをヒョーゴは覚えた。 思いだした。


「例のヤツか?」

「ああ、いま立てこんでいて忙しいんだ。今回の見送りには、オレは行けそうもない。
 だから今日のうちに挨拶をしておこうと寄ったんだが……」

「…………ふぅん………、そうか。
 お前が来ないとなると、また面倒な事になりそうだな……。まぁ、なんとかするさ。
 この時間に俺が来る事は伝えてあるから、そろそろアニキ達も帰ってくる頃だろう。
 それまでココで待つと良い。ちょうど俺も、お前に話しておきたい事があったんだ」

「悪いな、あまり時間がない。残念だが今日は帰ることにする」


即決し、リビングから出ようとして。ふたたびヒョーゴは向き直った。
表情も硬く。

「先日は行けずに、……行かせることができなくて、悪かった」

アノ日の出来事。その前の、予定。
ふたり分の謝罪。

「あぁ………アレか。あの日、俺も急な仕事で遅れて行ったんだ。出先から直接な。
 お陰で強制拉致も出来なかったってワケだ。なにしろ、お前は事前欠席だったろ?
 無理矢理にでも連れて行くしかないって、俺も久々に愉しみにしていたんだがな」

肩を回す叔父の話し振りを、ヒョーゴは微妙な笑みで眺める。

「見送りの時は、今度こそ容赦ナシだ」
「面倒を掛けて済まないな」

当人の身内に向かって云う自分の言葉に、ヒョーゴは違和感を持たない。

「しかたないさ」

掛けられた叔父も、同じだ。
暗黙の了解とでも言える、掛け合い調和が。そこには在った。


「 お前が誘いでもしなければ、アイツが素直に来るわけないからな 」



キュッと。胸が絞まった。
ヒョーゴのココロが鳴る。



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想いの行方 88

88


「時間ができた時で構わん。また来い。いつでも鍛えてやるぞ」

いとまを告げるヒョーゴに、師はニヤリと笑った。

「………そう…ですね。近いうちに必ず。どうぞお手柔らかに」

一瞬の間を置いて、誘われた弟子も笑い返す。不器用そうに。
来たときと同じく、深々と礼をするヒョーゴの頭の上で声がする。

「アレな、ボウヤにも訊いてみたぞ」

なにを、と。その続きを促すように顔を上げたとき。
もう次の言葉は用意されていた。

「『勝ちたい相手は見つかったか?』ってな。ヤツはなんと答えたと思う?」

思考を巡らし、広い道場内にヒョーゴの視線は游いだ。
今は見えない、数々の剣士たち仲間の姿を追い求めて。


…… キュウゾウは、特別だ。
   誰であろうと、大敗を喫する者など皆無。
   たとえそれが、この師であったとしても ……


「お前だとよ、ヒョーゴ。しかも見つけたんじゃなく、最初から決まってるんだとさ。
 厳密に言うとだな。勝ちたいというよりも、お前と…並び立ちたいんだそうだ」

ポカンと。声にはならない唇の動きをさせ、ただ師範を見返すヒョーゴ。
いま聞いたばかりの言葉の意味が、すぐには理解しきれなかった。
そんなヒョーゴの有様を見て師は。

「なんだ、その顔は。お前は昔からヤツの事となると、どうも平常心に欠けるな。
 冷静にして沈着な筈の男が。ほら、しっかりしろっ」

バンッ!と。大きく無骨な手が、放心中のヒョーゴの背中を叩く。
久々に受けた、師から弟子への、強烈な檄(げき)の一発だった。






道場を後にして、つぎの目的地へとバイクは向かう。
アクセルを開けるたび、同じモノが頭のなかを舞う。
ヒョーゴの困惑。発見。驚き。疑いー。


…… キュウゾウが、オレを ……?


勝ちはせずとも、負けてもいない。
そんな曖昧なラインで成り立っていたハズの、道場内での自分たち。
優劣など無関係なところで満足していたヒョーゴと。
共に、おなじ場所で並び立とうとするキュウゾウと。
ふたつは似ているようにみえて。ほんの、すこし…。何処かが何か、違っていた。


…… 昨日、お前は何を思って、あそこに来た ………?


 掛け違えたままの。 ふたりの、バランスー




思い耽るまま、住処に着く。
カンベエの部屋に置いてあった着替えだけでは心許ない。
これからもっと忙しくなる。まめに洗濯などしている時間もなくなりそうだ。
行動のための理由を持って、数日振りの自宅へとヒョーゴは戻ってきた。

時間が気になり、腕時計に眼を落とす。
意識して避けていた建物が、横切った。
離れて建つ洋館に、覚えのあるクルマ。

玄関前で脚を止め、ヒョーゴはソレらを正面にする。


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