Q夢想
侍7の9main
強く儚い者 9
9 密情
アカツキのこころには、自身の事など無かった。
去った少年の胸中と。 そしてー。
目の前の、火の紅の瞳。
「 …… 何故、何も言わなかった 」
己の事を、確信に触れる言葉を、避けようとするアカツキに。
キュウゾウが真っ直ぐに問う。
「言ったよ。『そうかもしれない』って」
「そうではない」
間髪入れず返された、強い声。
問うキュウゾウにも、何を指して言っているのか、自分でもよく解ってはいなかった。
時折アカツキに感じる違和感。
それが今また、胸をもたげ始めている。
あの少年の事など、キュウゾウの眼中には無かった。
取るに足らぬ雑輩だ。
下らぬ意識を纏った臆病者の、見え透いた自己弁護と茶番。
それが現状の引き金となったにしても、あの者の存在など、関係は無い。
アカツキの喚び声で、初めてキュウゾウは、自分が氣を発していた事に気付いた。
無意識のうちに起こしていたのだろう。
だが、それが何に対してのものだったのか。何を感じてのものだったのか。
今でも解らない。
…… アカツキの有り様に、何か…。 感じたのか……。
自分が同じような状況に置かれても、相手に告げる言葉など有りはしない。
そんなものに意味など無い。
煽てられようが、泣きつかれようが。 貶されようが、脅されようが。
そんな事に構ってなどいられない。
常に無関心。 無表情での拒絶。 冷酷に。冷徹に。
そんなキュウゾウが、アカツキの在り方には、釈然とせぬものを感じた。
ひとこと零したとは言え、アカツキは、自分と似たような振る舞いを見せていた。
何かを言われたから、されたからといって、動じてはいなかった。
ましてや、キュウゾウに、助力を求めようともしてはいない。
なのに…。
あの、ひとことを聴いた瞬間ー。
それは。
相手と己とが、おなじではなく。
ひとりずつ、別の人間なのだと。
己の中の、相手の存在が、絶対的価値なのだと。
そう気付いた時に生まれる、密やかな感情。
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