Q夢想
侍7の9main
強く儚い者 10
10 敗因
「ねぇ、キュウゾウ。もしかして…怒ってる、よね……?」
もしかして、なんてものではなく。
明らかに…。キュウゾウは怒っていた。
瞳を覗きこまなくとも。 表情が、声が、漂う気が、それを示している。
そして……。怒りの他にも、もっと別の感情が、見えた。
アカツキの言葉に、キュウゾウは、何も返してこない。
多分、きっと…。 自分でも解っていないのだろう。
一体、何に。どう、感じているのか。はっきりとはー。
「 …… 何故、何も言わなかった 」
また、同じ問い掛けをされた。
今度は、さっきのような答えでは済まされない。
此処には、ヒョーゴは、…いない。
自分で、ちゃんと。 伝えなければ…。
「あのコの…。彼の言う通りだったから」
少年の言った事は間違いでは無かった。
彼の完敗だった。
決勝でのアカツキの動きは、普段、学舎で見せるものではなかった。
その所作で。 常に帯刀する、その刀で。
人を、斬る。 人の赤い血を、浴びる。
容易くというのなら。
その瞬間のアカツキには、迷いなど、無い。
だから、きっと。 そうなのだろう。
無心かどうかはー。
言葉を以て言えば、これも間違いではない。
だが。少年の思うところとは、別の相違があるかもしれない。
少年の意味する『無心』と。
斬る者が抱える『無心』と。
アカツキの持つ『無心』とー。
其処には、大きな差異が、存在する。
命を奪う事。
それは……。
そんなアカツキを、少年が目撃したというのも、本当だろう。
未だ人を斬った事の無い彼にとっては、奇異なものとして、眼に映ったに違いない。
同年代の、自分よりも身体の小さい少女であるアカツキが。
人の肉を斬り、骨を断つ。 そんな、おぞましい感触を、既に知っている…。
そんなものを見て、脳裏に焼き付いて。
一度は忘れようとしたとしても、無かった事として誰にも言わずにいたとしても。
いざ対峙すれば、……嫌でも浮かんで来る。
真剣を振るう、アカツキ。
その動き、その色。
表情の無い、表情。
恐怖を通り越した、得体の知れない感情。
自分の身に懸かる、期待。 胸に在る、意気。
じわじわと競り起こる、心の葛藤。
そんな彼を飛び越すように、アカツキは奔った。
そして、少年は敗れる。
それは、何の所為? 誰の、所為?
強く在る事は、いけない事?
強さを求める事は……。
何かにとって。 誰かにとって。 ……… 悪い事にもなるの?
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