Q夢想
侍7の9main
気づいた言葉
そう言えば…。
気づいた言葉
夕刻も近づいたころ、ヒョーゴは2人のコドモを、シチロージの店へと引率した。
准教授への引き渡しまで、まだ時間があった。
ここらで自分も休もうと、もうひとつの金色頭に後は任せようと、画策した。
「今日は子連れですかい?」
3人を見た、店の主の開口一番が、ソレだった。
どいつまでがコドモで。だれが、親で。
そして自分の役ドコロは、いったい何なんだろうかと。
一瞬、ヒョーゴは真剣に考えてしまった。
… 馬鹿馬鹿しいっ。
『 いらっしゃい。おチビちゃん。コーヒー飲めますか? ミルクのほうがイイかな? 』
シチロージは、人の良い戯けた微笑みで、少年に向かって唄った。
流れる言葉が、まるで歌っているように。…そう、聴こえたのだ。
「お前、話せるのか」
つい、訊いてしまった。
目の前で実際に話しているのだから、答えを聞くまでもない。
「エェ、マァ…。アタシも向こうの国で生まれましたからねェ」
『向こうの国』か…。
ソレはどこのコトなんだ? 金色頭の巣窟か?
シチロージの、曖昧な微笑で応えた物言いに、ヒョーゴはまた、物思う。
… オレの知らない、オレの傍には居なかった、キュウゾウの国 …。
もちろん、ソレが何処のコトなのか、ヒョーゴは知っている。
その地に立ったコトだって、ある。 キュウゾウと2人でー。
高等部に進学した年、キュウゾウの両親からの招きに応じた。
ヒョーゴが来るというカタチを取れば、結果的に、キュウゾウも付いてくる。
なんだか立場がアベコベのような気もするが、音沙汰ない息子の動向を、
キュウゾウの親もまた、よく知っていた。そのうえでの、ヒョーゴの招待。
常に各地を飛びまわっている、多忙なキュウゾウの両親だったが、
そのときは、2人の来訪に合わせて時間をつくり、共に会食もした。
キュウゾウは、愛想のない息子のままだった。コドモの頃と同じー。
それでも、訪ねてきたことが、最大のコドモゴコロなのだと、家族は解っていた。
ヒョーゴの存在を、おおいに歓迎し、感謝さえもしてくれていた。
向こうでも、キュウゾウは変わらなかった。 ずっと一緒に居た。
家の中でも外でも、キュウゾウは傍に居た。 ずっと一緒だった。
各自にゲストルームを用意してくれていたにも関わらず、キュウゾウの眠る場所は、
ヒョーゴの隣だった。でかいベッドだったから、問題は無かったが…。
イイ歳をして、共に眠ろうとするキュウゾウに、両親も何も言わなかったが…。
そんなトコロが、昔と変わっていないというコトが、そのまま。
キュウゾウが安定した日常を過ごしているという、家族にとっての安心のようだった。
観光という程でもないが、2人で街を廻った。
成長したキュウゾウにとっては、久しぶりの街並だったハズだ。
なのに…、普段以上の反応の薄さ。
アレなら、バイクやクルマで遠出した時のほうが、ずっと表情の変化もあった。
おまけに、いつも以上に、喋らないっ。
おかげで、慣れない地で、慣れない言語で、ドコへ行くにもナニをするにも、
ヒョーゴが地元の者達と、つたなく対応しなくてはならなかったのだ。
そんなヒョーゴの様子を、ジッと。 キュウゾウは眺めていた。
なにも喋らず。
… どうせオレはお前のようにはいかないさ。
… ココにいる間くらい、お前がオレをエスコートしろよっ!
そう悪態をつきながら。 だがソレはココロの中だけのコトで。
いつものキュウゾウに。 いつもの自分の役ドコロに。
ヒョーゴは満足感のようなものを、ひそかに覚えていたのも事実でー。
みっつの金色頭をカウンターに残し、ヒョーゴはその後ろのボックス席に移った。
ソファに身体をあずけ、すこし距離を置いた光景を、静かに見入る。
優しく唄う、音。 … 甘いシチロージのものだ。
跳び上がる、音。 … はしゃいだガキのものだ。
短い小さな、音。 … キュウゾウの、…………。
ふと、ヒョーゴは気付く。
気付いたコトに、驚いた。
いままで気づかなかったコトに、呆然とした。
( ……そうだ…。…アイツ、話せるんだよな……? )
| HOME |

進行中の話のみ逆表示