Q夢想
侍7の9main
気づいた言葉 3
「ああして見ると、やはり違うな」
ヒョーゴの視線の先と同じモノを、アゴ髭を摩りながらカンベエも眺めている。
「お前に違いなんかあるのか? 色さえアレなら、なんでも好いのだろうが。
あの色がスキだからな、お前は」
またもや皮肉タップリのヒョーゴ。
だがカンベエは、ニヤリと微笑うだけで、否定も肯定もしない。
その意味ありげな苦笑いは、初対面の時に見せたモノと、よく似ていた。
「いや、ひとくちにキンパツと言ってもだな……」
なにやら小難しい言葉で、高尚っぽいコトを、神妙な顔で、
ヒョーゴに向かってカンベエは説き始める。
…… 寝言はオレの前以外で言えっ。
なおも続くその講釈を、右から左へと受け流し、ヒョーゴはカウンターに意識をやる。
雑音のせいで、『向こうの国』の音の世界は遠くなった。
それでも視るコトはできる。 眩しい発色をー。
( 違う、だと? そんなもの、当たり前だ…… )
「 アナタがいま考えているコト、当ててみましょうか、ヒョーゴ 」
「……結構だっ」
遅い昼食か、それとも早い夕食か。そんなもの、ヒョーゴにはどうでもイイが。
シチロージが情人に喰いものを運んできた。
「どうぞ。カンベエさま」
「うむ」
トレイからテーブルに移し置く手と、掛ける言葉は、情人に向かってはいるものの。
絶やすことのない微笑は、なぜかヒョーゴに向けられたまま。
『ボクも食べたい! 同じものっ』
カンベエに与えられたモノを見て、少年が、無邪気なリクエストをする。
『お前、帰ったら夕飯が用意されているだろう』
『イイのっ。どっちも食べられるから!』
ヒョーゴの細心な忠告も、ハイティーンの盛んな食い気には、あまり意味がなかった。
「2人はどうします? 食べておきますか?」
カウンターとボックス席を、交互に見やりながら、店主は尋ねる。
「……ああ、そうだな。頼む」
視線をくれることもなく返すヒョーゴの先には、沈黙のキュウゾウ。
やはり、見られている。 ジッと。赤褐色が送られてくる。
「じゃあ、キュウゾウの分もってコトで」
曖昧な片笑みをヒョーゴに残し。
シチロージは、ちいさな『向こうの国』へと戻っていった。
| HOME |

進行中の話のみ逆表示