Q夢想
侍7の9main
知らない言葉 3
大学を後にして、ヒョーゴはカンベエの仕事部屋にやってきた。キュウゾウも一緒だ。
笑顔で手を振る少年に見送られ、ダンディオヤジ…約1名の評価だが…の待つクルマに
戻るまでの僅かな時間で、これからどうするかと、ヒョーゴは迷った。
そのまま自宅まで送るとすれば、キュウゾウはひとり、家で待つコトになる。
… どちらの家か。 多分、ヒョーゴの部屋のある方だ。
互いの住処は近いのだから、どっちへクルマを向かわせようが問題は無いハズ。
そのまま別行動を取るとすれば、キュウゾウはひとり、店へ戻るコトになる。
… 帰るか待つか。 多分、シチロージに捕まるだろう。
あまり時間は経っていないのだから、まだ『向こうの国』の余韻は残っているハズ。
キュウゾウを。 ヒトリにさせてしまうのも、自分以外のフタリとなってしまうのも。
なんとなく…。 ヒョーゴは避けたい気分だった。 すこし…。いや、……だいぶん。
邪魔者たちの居ないトコロで、キュウゾウと。 2人きりになれないままでは。
こんなキモチのままでは……。
「しばらくココで大人しくしていろ」
書類ファイルの整理をしながら、ソファベッドで寝転ぶキュウゾウに、声を掛けた。
映し出されるTVの映像にボンヤリと眼を向ける、ネコのように寛いでいるヤツ。
ソレを眺めるヒョーゴの心情が、まるく柔らかなものになる。
隣の、敷地内の中央に位置する広いリビングには、仕事中のカンベエが居る。
2人の居る部屋は、もともと使用されていないゲストルームのようなものだったが、
ヒョーゴが出入りするようになってからは、資料室から溢れ出た膨大な未分類書類が
運び込まれ、いまでは立派に、アシスタント部屋と様変わりしていた。
ときどきは、ヒョーゴもココに泊まり込むコトもある。
ときおりは、キュウゾウも一緒にー。
今日のように、ヒトリにはさせておけないトキに。
ヒョーゴが…、ヒトリにはさせたくないと、想ったトキに。
数分置きに、カンベエの呼ぶ声が聴こえてくる。 その度に、ヒョーゴが向かう。
手に、数束のファイルを抱えて。
戻ってくる時には、その倍の荷物となっている。
そして、ソレを片付ける。 その、くりかえし。
ひと整理し終え、いまやヒョーゴ専用となったパソコンを立ち上げた。
表示画面が現れるのを待つ間、チラリと横目でキュウゾウの様子を窺う。
TVを眺めているとばかり思っていた眼は、その背景にある窓の景色へと流れていた。
ボンヤリから、ボーッと。 さらに遠くへと、眼差しが薄くなってゆくように…。
「 キュウゾウ 」
つい、呼び掛けてしまった。
そのままの表情で首だけを回してきた脱力者が、視線で問うてくる。
「いや、まだ終わったわけではないが…。ヒマか?」
ヒョーゴの声音が、ひどく優しいものとなっていた。
ソレを敏感に感じ取った暇人が、ゆるりと立ち上がり、背後に寄ってくる。
イスの背もたれに掛かる黒髪ごと抱き込むように、ヒョーゴの首に両腕を回してくる。
「 ………どうした……。ん? 」
肩口で埋まる、柔らかな金色の髪。
首筋に掛かる、熱く零される吐息。
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