強く儚い者 28


28 怒る


「姫様は、お前が怒った事に気付いていたさ。
 だが、自分の優柔な言動が、お前の気を乱させたと思っているのかもしれぬな」

ヒョーゴの言葉に、キュウゾウは回顧する。
其れ故、あのような事を、云ってみせたのかと。
…… 心の闇と虚無。


 あれは、アカツキの、…こころの深淵だ…。


それに触れた自分が、今この時に思い至った事ー。




「 あいつは…己を軽んじている… 」

「 ああ 」

「 ……解っておらぬ 」

「自分だけでは気付かぬ事もある」

「 …だがっ…… 」

「姫様は、お前の有様を見て、辛いと言っていたのだろう?」


 『 キュウゾウに、あんな氣を起こさせてしまったことが、
   そんな眼をさせてしまったことのほうがー。 すごく、辛い… 』


「そうやって、段々と解ってくる事もある。
 お前が姫様に怒りを見せる事は、姫様自身の為にもなる」

「 ……よい、のか… 」

「自分では気付かない姫様の跛行は、俺達で掬い上げてやれば良い。
 それを感じ取ったお前が、姫様に怒れば良い。
 お前がやらずして、誰が伝えてやれる?」


( 俺には、出来そうもないからな… )

ヒョーゴの心の声。




キュウゾウの云う、自分では解っていないアカツキは。
他者の痛みや哀しみには鋭敏になれるのに。
自身のそれには、酷く疎い。避けているとも言える。

自分では知らず傷つくアカツキを見て。
心を痛める者が居るという事に、気付かないでいる。
気付くのは、惜しい哉。結果としての相手の感情。
其処に至る迄の行程に、よもや自身の深層が関わっているとは、知る由(よし)もなく。
真意には届いていない。

守られるという事は、身体の無事を指すだけではない。
常に気に掛け、優しさや温かさ、厳しさを以て、見守るだけではない。
共に感じ、哀しみ、苦痛すらも抱く事とてある。自らそう望んで。

それを解らずに。 自身を大切にしない。

傍で見守る者にとって、時にそれはー。
憐憫や憂慮を超えた、義憤ともなる。


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