Q夢想
侍7の9main
強く儚い者 30
30 高み
「 ………高みへ、か… 」
そう呟いた男は、俯きがちに、唇の端だけを持ち上げて、声もなく微笑った。
己の、属望に。
友の、的中の言葉に。
想い描いた、アカツキの姿にー。
成る程。 云われてみれば、その通りだった。
気付いてしまえば何て事はない。
自分は、唯ー。 アカツキに………。
「どうだ、少しはスッキリしたか?」
変わらぬ表情で、ヒョーゴは声を掛けた。
「 下らぬ者の相手など、あいつにさせなければ良い 」
整然とした座位に相応しい、キュウゾウの、揺るぎの無い口調。
「おいおい、言っただろう。姫様には姫様の思惑がある。
何もかもをも取り上げてしまっては、本末転倒も良いところだ。
全くっ。両極端な奴だ、お前という男は…」
やれやれと、ヒョーゴは溜め息をつく。
「大体な、下らぬ輩は、それこそ何処にでも居るものだ。
それを全て、お前は排除するつもりなのか」
キュウゾウが言うと、こいつなら遣り兼ねんと思えてしまうから恐い。
「それにな、今日の少年とて、下らないの一言で括れる者ではない。
一時(いっとき)の感情が、愚行を招く事とてある。
弱い者も居るんだ。誰もが強い訳ではない」
じっと黙って話を聞いているキュウゾウは、やや不服そうにも見える。
「 …ヒョーゴも、甘い 」
ボソッと、呟かれた。
ささやかな、キュウゾウの反抗。
「甘い事を云って、綺麗事を追って、それでも強く在れれば良い」
「 ……それは、あいつの事か… 」
紅の瞳が、瞬きで一瞬、消えた。
「攻める側にどんな事情があろうとも、受ける側はみな同じように痛い筈だ。
それに気付いたとしても、姫様は、やはり相手を赦すだろう。…優しい人だ。
その優しい部分を、もっと強く育ててやりたいと、俺は思う。
甘い考えは、優しくて甘いものだろう?」
ヒョーゴは、甘事以上の穏やかさで、キュウゾウに微笑う。
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