強く儚い者 33


33 ボウガン


刻は遡り。
ヒョーゴとキュウゾウが、内談している頃ー。


アヤマロへの挨拶を済ませ、アカツキは、ウキョウと夕餉を共にしていた。
いつものように、旅の話を聞きながら。


「ほら、また珍しいものがイッパイだろ? コレなんかさ〜」

移った部屋で、色とりどりの高価な品々を前にする。
それらの中には、アヤマロから贈られた物も並んでいた。

虹雅峡を出る度に、ウキョウはアカツキに土産物を持って帰って来る。
幼い頃からのその習慣は、二人が少年少女となった今でも変わりない。
アカツキは大層恐縮する。 こんなに毎回、気遣ってもらう必要はない。
ウキョウは聞き入れない。 したい事をしているだけだ。
アカツキ一人の身には余ってしまう、その豪華な献物達は、専用の部屋へと飾られる。
その部屋に、今回また、新たな飾り物が増えた。


ウキョウの心馳せは嬉しいと、アカツキは思う。
だが、その気持ちを目の前の現物と、上手く照らし合わせる事が出来ずにいる。
こんな時、どういう顔をして。 何と言えば良いのか、戸惑ってしまう。
それがとても、苦しい。

物を与えられて、心から笑えたのは。
ヒョーゴとキュウゾウ、そして…テッサイに対してだけだった。

あの時とこれは、…どう違うのだろうか……。




「いつでもさ、この部屋に来るとイイよ。みんな、暁(あかつき)のなんだからさっ」

夜も更け、そろそろ自分の屋敷へ戻るウキョウと連れ立って、部屋を出た。
ウキョウはアカツキの困惑を特に気にも留めず、明るい声を聞かせる。
すぐに自室へと戻るつもりのないアカツキは、そのまま一緒に本殿に向かった。


中庭に面する回廊に差し掛かった時。
一人の用心棒が居た。ウキョウお抱えの者。 ボウガンだった。

「ちょうど良かった。もう僕、屋敷に戻るからさ。テッサイを呼んできてよ」

主たる態度で、ウキョウが命ずる。
受けた命に報答し乍らも、ボウガンは、すぐに立ち去ろうとはしなかった。

「なに? どうしたの?」

少しの苛立ちを見せながら、ウキョウが詰め寄る。

「えっと…。コレ、姫さんに…」

おずおずと。 ボウガンが、アカツキに何かを差し出して来る。
片掌で底を支え、持ち上げられた物。
風呂敷に包まれた、嵩高の、箱状物。




ウキョウに掴まったアカツキが、その後ヒョーゴの許に向かうと予測していた。
だから、それを見越して、ボウガンは此所で待ち伏せていたのだ。
まさかウキョウ付きとは思ってもみなかった。
もっとカッコヨク、スマートに、漢らしく紳士的に、贈答しようと企んでいたのに…。

( こうなったらしょうがねぇッ )

ズズイと、中庭に立つボウガンは、一段高い回廊に佇むアカツキに迫った。


アカツキが、土産物類を快く享受しない事は知っている。知れ渡っている。
例外なのは、主であるアヤマロと。一緒に育ってきたコドモ同士のウキョウ。
ボウガンは、何度も辞された事がある。申し訳なさそうに、畏まってー。

『 お気持ちだけ戴きます。ありがとうございます 』

アレは結構ツライ。傷付いた。 ……オレのデリケートなココロが…。
それでも、凝りたりはしない。 ……オレはタフな漢だからなっ。


ボウガンの、心の中で繰り広げられる、熱い随想。


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