強く儚い者 34


34 ウキョウ


「 私に、…ですか……?」

案の定、アカツキは戸惑っている。
また、いつもの台詞を聴かされるのかと、ボウガンは身構えた。


「イイんじゃないの〜。もらっちゃいなよ、暁(あかつき)」
「 でも… 」

「くれるって言ってんだからさ、遠慮なんかせずに貰っちゃっとけばイイのっ。
 で、なんなのコレ? なにが入ってるの?」

おもむろに伸ばされたウキョウの手が、問答無用とばかりに、ボウガンから物を奪う。
素早く解かれた風呂敷の中味は、三段の重箱だった。
ウキョウは蓋を開け、更に中味を確認する。

「なーんだ、コレか〜。もう食べ飽きたよーコレ。行く先々で出たしー。
 コレねっ、アッチの名物なんだってさ。マァマァだったよ。
 それほどじゃなかったから、僕は持って帰らなかったけどねー」

重箱の中を、アカツキも覗き込んだ。 表情なくー。

キレイに形作られた菓子が並んでいる。
次々と開けられた下の段にも、同じものが詰められていた。

「ホラ、こんなに沢山あるじゃない。留守番してたミンナにってコトなんだからさ。  
 暁が貰っておけばイイのっ。ネェ、そうだろう?」

一見、助言のようにも聴こえるウキョウの言葉は、したり顔でボウガンに向けられた。

「エエ…、マァ…」

それ以外、応えようのない、桃色髪の男。

「ねっ。笑ってアリガトウって言っとけばイイのさっ」


ウキョウは優しいのか意地が悪いのか、誰にも突き止められない。
そんな飄々とした言動で、人に影響を与えて来る。
アカツキにとってのそれは、決して悪いものばかりではなかった。
ヒョーゴやキュウゾウとはまた別の。どこか心安いものが在った。


「 ……ありがとう、ございます… 」

覚束ない声が、アカツキから出た。

「そうそう、イイコだね〜」

面白がって、ウキョウはアカツキを褒める。
そして、重箱の中味に手を付けた。

見る見るうちに、減ってゆく。
夕餉の後だと言うのに。食べ飽きたと言っていたのに。
ウキョウの手は止まらない。
箱の中で行儀良く並ぶ菓子達が、一箱分、消えた。


焦る、ボウガン。
物とは違って、食い物なら、後には残らない。 受け取りやすいだろう。
しかも菓子ならオンナ受けもする。 更にウマくてキレイとくれば威力倍増。
そう、思っていたのに。 こんなカタチで消えてゆくとは…。
驚きよりも、悲愴感。


そして、アカツキは。
そんなウキョウを見て。 軽く掛けられた先程の言葉を思い返して。

「 ボウガンさん、ありがとうございます 」

もう一度、伝えた。

今度は、ちゃんと微笑んで。
瞬時に表情を変えたボウガンを、ちゃんと見て。


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