強く儚い者 46


46 導き


あの、ヒョーゴの愁い顔を。心痛の言葉を。秘めた感情を。
ぼんやりとキュウゾウは思い浮かべた。

ああした友の有り様は、特に珍しいものではない。
空の上でも幾度と眼にしていた。 訳も無く、胸が騒いだ。
だが、今は。 其処に内包し、されるものが、少しは解るような気がした。
変わらず自身に向け続けられているものが、他の者へも。
アカツキにも注がれる様を視、理解できるようになってきた。
『 己の事は解らない 』とは、よく云ったものだ。 正にその通りだった。
ヒョーゴの傍で。ヒョーゴの情の先を。 共に視る事で、初めて気付く。


 …… あの時も、あの場でも。
    ヒョーゴは、こんな気持ちでいたのだろうか。
    そうやって、俺を。 俺の事をも、案じていたのだろうか ……。


何も出来ぬと、ヒョーゴは云った。
ならば。あの幾瀬の言共は、指標とも為した振舞いは、何だと云うのか。

理解不能なまま、それでも。
盟友の言葉を、信じて来た。
ヒョーゴの存在に、引き留められて来た。
破壊の衝動に駆られた時。そんな時、いつもヒョーゴの声が頭に響いた。
断ち切るに惜しく、失するに寂寞なものとしてー。
他人にどう思われようが、意とせず打ち捨ててきた己が。 友には。
ヒョーゴだけには、失望されたくはないと。
何故か不思議と…。そう思えた。思わせるだけのものが在った。
なのに…。


 …… あいつらは、揃いも揃って、複雑過ぎる ……。




闇夜を閉じ込めるように窓を閉め、キュウゾウは寝台に向かった。
場を占領するかの如く、中央で眠るアカツキの、小さな身体の下に片腕を入れ、
もう片方で頭を持ち上げ、掬うようにして奥へと寄せる。
ネコのぬいぐるみも、共に添わせてやった。
眠りの呼吸は変わらない。
その様に、フッと笑みが零れた。
眠れるのであれば、それで良い。 今の自分がしてやれる事ー。


上掛けを掛けてやり、灯りを消すと、傍らの空けた場に、キュウゾウも臥す。
再度、温かな手に触れてみた。
自分達と同じ、兇刃を取る手とは思えない程の、小作りな柔手。
ふと、昼間のアカツキの言葉が浮かんだ。

 『 斬る相手を見ていない 』

あれは…。 ヒョーゴの言だ。紛れも無い。
空で己も示唆された。 懐古するには早くも遠い記憶。


 …… お前も。嘗ての俺と、… 同じ場所に居るのか ……。


「 ヒョーゴが居て、良かったな 」

気骨の盟友を想い。
聴者の居ぬ呟きを、眼の前の少女に囁き。

キュウゾウは、浅い眠りへと導かれようとする。


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