想いの行方 2

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「おや、今日はひとりですか?」

ドアを開けたまま所在無さげに佇むキュウゾウに、シチロージは声を掛けた。
ココにお座りなさいと、カウンターのいつもの席へと促す。


店の窓から、トボトボと歩いてくるキュウゾウを、ずっと眺めていた。
… ああ、またヒョーゴは、格闘しているのだな …。
ムコウから離れ、コチラに近付いてくる、行き場のないコドモのような青年を。
遠ざかるコトに、近づくコトに、躊躇し、彷徨い中の迷いビトのような青年を。
シチロージはフッと溜め息をつき、想った。


「今日はアタシと2人で食事しましょうね」

明るさを誘って、陽気に振る舞ってみせるが、キュウゾウは、無言の返答。

「ヒョーゴも忙しいんでしょうよ。カンベエさまも〆切に追われていてね」

他の2人の名を出してはみたが、キュウゾウの瞳は、明後日の方向。

( ひとりで考えるコトも、まぁイイでしょうかね… )

遅い思春期が訪れたコドモを持つ、過保護な親になったようなキモチだった。
でもまぁ、コレも悪くはないかと。シチロージは思う。






キュウゾウが、さっき最後に見たヒョーゴ。
ワケの分からない人間に、詰め寄られていた。
そう言えば…片方の男が、なにか言っていた…。 大会…?
その程度しか、キュウゾウは覚えていない。


ヒョーゴとキュウゾウは、剣道部に籍を置いている。カタチだけー。
中等部の頃、道場での先輩が学校の部活にも在籍しており、2人の入部を望んだ。
道場と比べるとヌルいモノでしかなかった部には、それほど関心は無い。
義理の幽霊部員として、高等部に進学してからも名だけが残っていた。
2人とも、道場通いは鍛錬が目的だ。 団結だとか形式試合には、興味は無い。
唯、強くなれれば。それで良かった。

律儀なヒョーゴは、世話になった先輩の顔を立て、入部後いちどだけ大会に参加した。
キュウゾウは、芋ずる式に、付いてきた。 ヒョーゴに。
気をてらい、先鋒をキュウゾウに。 副将をヒョーゴに。 大将は先輩に進呈して。
その大会は、見事に優勝を飾った。 当たり前だ。 三人が絶対に勝てば、負けは無い。

それからというもの、度々2人に、大会参加の依頼がくる。頼みこんでくる。
けれど、一度だけでもウンザリしたヒョーゴは、上手く躱していた。
キュウゾウは、以下同文の如く、無言で同意していた。 ヒョーゴに。


ぼんやりと、コトの状況が、キュウゾウに追いついてきた。
あの場のヒョーゴのコトは、なにも問題はない。
ヒョーゴなら、上手くやる。自分は、必要ない。
けど…。

近づいてくる、薄い違和感。


 ( そのあと…。ヒョーゴは、どこに行くんだ? なにを… )


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