想いの行方 4

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「今日は何が食べたいですか? また、肉にしますか?」

ここ最近の、帰りが遅くなったときのヒョーゴは、その度にキュウゾウの食事を
気に掛けている。
ヒョーゴ自身、なにやら後ろめたいキモチを抱え、ソレを払拭するかのように。
いま、自分がキュウゾウに出来る、想い遣ってやれるコトは、ソレだけかのように。
口に出して頼まれたわけではなかったが、シチロージは、そんなヒョーゴの想いに
添ってやりたいと思っていた。


「 ……なんでも… 」

本当に、なんでもイイのだろう。 この無欲なコは…。
だが。

「そんな張りあいの無いコト、言わないでくださいな。
 そうだ、知りあいから送られてきたイイモノがあるんです。量は少ないですけどね。
 アタシたちだけで戴きましょうか。ヒョーゴもカンベエさまも居ないうちにー」

そう言って、シチロージは食材を取りにゆこうとする。
その背後で、微かな音。

「 …待つ 」

ちいさな、みじかい、キュウゾウの意ー。


随分前の1度目は、先に食べた。なにも考えずに。そのあと眠ってしまった。
なんだかとてもキモチが良くて、夢みたいなモノも見て、覚めてからもまだ、
フワフワしていた。眼の前には、やさしい声と眼差しが。ヒョーゴが在った。
最近の2度目は、待っていたけれど結局、先に食べた。シチロージが煩かった。
食べているうちにヒョーゴが帰ってきて、怒られてしまった。なにを今頃とー。
前回の3度目は、カンベエが居た。たまには外でと、強引に焼肉屋に連行された。
次から次へと皿に肉が盛られ続け、カンベエから「もっと喰え」と無理強いされた。 
おくれて合流してきたヒョーゴの機嫌は悪かった。ちゃんと先に食べていたのにー。


 今日は…。
 最後まで、…待つ。
 煩かろうが、怒られようが、機嫌が悪くなろうが、かまわない。

 だいたいっ。食べることが、そんな重要なコトなのか?
 ヒョーゴも。カンベエみたいなのか?
 どうして…。そんなに……。

 ヒョーゴは居ないくせに……。


絶対、待っていてやろうと。 こころに決めた。意地になった。
どうしてか納得がいかない。 理不尽だ。


 いや…… そんなモノじゃなくって…。

  ………… なんだ? コレは …………。






「しょうがないですねー」

ヒョーゴの想いも。キュウゾウのモヤモヤも。
どちらも覚えのあるシチロージには。
どちらのキモチにも添ってやりたい。 できるだけー。

「じゃあ、コレだけでも口に入れなさいな」

差し出した、小さな皿。
その上には、カキの種。

( とりあえず。コレで両者の顔を立てておきますか )

ヒョーゴの怒鳴り声を、甘んじて自分も身に受けようと。
2人のコドモの、過保護な親となる、シチロージだった。



柔らかな物言いとは裏腹に、これ以上は譲れないという空気を察し、
キュウゾウは無言で皿のモノをひと掴みすると、漂うようにボックス席へと動いた。

長い脚をテーブルの下に組み仕舞い、ソファに背を預ける。
ついでのように、気のない素振りで、窓の外に眼をやった。


まだ、……居ない。

そのまま視界を上へ。
上方へと、游がせる。

そして、 空 ー


待ち人来らずの、つかの間。
もうすぐ訪れるハズの色を待つトキが、キュウゾウのココロの隙間を埋める。


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