想いの行方 7

7


家に入ってすぐにシャワーを浴び、そのまま自分の部屋へと、ヒョーゴは向かった。

キモチを切り替えようと、濁りを流し消そうと、そう思って受けた熱湯と冷水は、
けれど今のヒョーゴには、なんの助けにもならなかった。
急き立つようにして衣服をつけ、半乾きの髪のまま、駆け上がるようにして階段を跳び
結局やったコトといえばー。

道を隔てた洋館の2階に、視線を送る。
外との空間を遮っている、窓を開ける。

すこしでも鮮明に見ようとするように。
わずかでも距離を縮めようとするように。

やはり。どうしても…。
眼は、腕は、向かってしまう。 彼(か)のほうへとー。




キュウゾウの部屋は、暗いままだった。
家のどこにも灯りは点いていない。

( 寝たのか…? )

いや、そんなハズはない。
すぐに自分の思考を、ヒョーゴは打ち消した。
アイツが…。 キュウゾウが、ひとりで即眠するハズがない。

暗い部屋の中で、しばらくジッと、ただ一点を見つめた。
窓に映る色影が、クロからオレンジに変わる瞬間を待ち。


( なにをやっているんだっ。アイツは… )

窓を開けてから、まだそう時間は経っていない。
視線を留めたままのヒョーゴには、時の流れが遅くも速くも感じられた。


 狂いはじめる、トキ




やがてー。
振り切るようにして標的から眼を逸らし、ヒョーゴはベッドに身を投げだした。
ドサッと、カラダが沈むオト。
ギシッと、スプリングが軋むオト。
自分の起こした音が、ココロのなかの存在を、呼び戻す。
ココで。自分以外の者が起こす、おなじ音ー。


 キュウゾウの、オト


なにも言ってはこなかった。 … それでも聴こえていた。
なにも訊いてはこなかった。 … それでも感じていた。
なにも、耳にはしていない。 … それでも、届いていた…。

なのに。なにも応えなかったのは、自分だ。
いつもなら。冷たい言い方になろうが、はぐらかすようなからかい口調になろうが、
たとえ、うまく誤摩化すコトが出来ずとも、ちゃんと向きあえてきた。

赤褐色の瞳を受けとめ。 ー 刺され
金色の光輝を追い求め。 ー 眩ませ
呼び。 ー 木霊する
触れ。 ー 陶酔する

いままで、いつも、当然のようにしてきたコトが。
今夜は出来なかった。
やりたくなかったわけではない。
むしろ…。


( そろそろオレも、限界…か…… )



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