想いの行方 8

8


眼にするから余計に気になるのだと、視界から消したハズのモノの動向が、
ヒョーゴを落ち着かせない。
両手を頭の後ろで組み、天井を仰いでいた体勢から、ゴロリと横向けに身を転がした。
頭の上となったほうの腕を、胸の前へと下ろす。
力なく横たわるカラダの下、布地の柔らかさを確かめるように、シーツに触れた。


 ときどき、ココで眠っている。
 いつも……安らかな寝顔を見せている。
 たびたび、擦り寄ってくる。
 そして……憩う吐息を聴かせている。

( オレを惑わし、…… 安心させる …… )


いまココには居ない、瞑する者の残影が。
ヒョーゴのココロを震わせる。
ヒョーゴのこころを、………掻き立てる。




我慢できずに、ベッドから跳び起きた。
息衝くヒョーゴが、ふたたび窓辺に立つ。
オレンジの色を見られさえすればー。


( アイツ… )

相変わらずの、闇の色。
浮かぶ、金色と赤褐色。


キュウゾウを降ろした後、一瞬だけ、振り返った。
なにか言いたげな表情が、眼に映った。
それはそのまま、バイクのミラーにも映っていた。

胸が、ギュッと締めつけられるような痛みを感じた。
… そんな顔をさせてしまった自分 …
頭に、フワッと霞むような浮くような酔いを受けた。
… 求められていると、そう思えてしまう自分 …

物言いたげなキュウゾウの、声にはされなかった台詞は。
聴きたくて……。今夜は聴きたくはなかったモノだ。
おそらくヤツも、今日の自分の態度に、違和感を持っていたのだろう。
ずっと、窺っていた。 深い赤色の眼差しで。
ずっと、見送っていた。コドモのような影で。
そうさせたのは、………自分だ。

( ……云って、くれさえすれば…。オレは…… )

できれば聴きたくはなかった、キュウゾウの声なる言葉は。
こんなときでも。狂おしいまでの、自分の望みでもあり…。


( ほんとうに…、オレは…。……なにをやっているんだっ! )




いまの、支離滅裂な自分自身にも。
いまの、言葉を呑みこませたままの存在にも。
ヒョーゴは限界だった。

駆け出すようにして、部屋を出る。


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